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M2伸び率が急速鈍化
6ヶ月内にバブル調整
先に発表された4~6月期のGDP成長率は、前年比6.9%であった。不動産関連投資が支えたものだ。国家統計局は声明で、「全体として、中国経済は上半期に安定的な前進を続けたが、国際的な不安定さや不透明感が依然として比較的大きいほか、国内の構造的な不均衡が残っている」(『ロイター』7月17日付)と、先行きへの不安を隠さずにいる。
その通りであろう。具体的には、世界的な金融情勢の変化だ。
2008年のリーマンショック後、10年近い歳月が流れている。この間、世界的な超金融緩和を続けてきたが、徐々に解除の動きが始まっている。カナダは7月12日、7年ぶりに利上げを決断。欧州中央銀行(ECB)やスウェーデン中銀も「緩和方向」の政策方針を中立に戻した。日本経済はまだ、異次元金融緩和の出口論は時期尚早だが、さらに金融緩和度合いを強める環境ではなくなっている。
世界中で最もその動向が注目されるのは中国である。超金融緩和を背景にして不動産価格を意図的に押し上げて、GDPのけん引役とさせてきた。もはや世界の金融情勢から、それも不可能になっている。
『日本経済新聞』(7月15日付)は、世界の金融情勢変化を次のように指摘する。
(1)「日米欧に中国も加えた4中銀がリーマン危機後、市場に供給した『ベースマネー』と呼ばれる資金量は10兆ドル(1130兆円)超に上る。新興・資源国の資金需要は旺盛で、ベースマネーがさらに貸し出しなどに回って乗数的に膨らむ通貨量(マネーサプライ)は世界でじつに40兆ドルも増えた。危機前の06年に約50兆ドルだった世界のマネーサプライは14年に約1.8倍の90兆ドルに達した」
リーマンショック後、世界の過剰通貨の受け皿の一つが中国であった。2014年6月、外貨準備高が4兆ドルへ接近した裏には、行き場を失っていた緩和マネーの乱舞があった。中国へ殺到する外貨を見て、中国当局はそれが中国経済の「実力」の反映と誤解したのだ。リーマンショック前の06年、約50兆ドルだった世界のマネーサプライは、14年に約1.8倍の90兆ドルにも達した。
(2)「世界の通貨量は戦後、GDPと釣り合うかたちで伸びてきたが、リーマン危機後はGDPからかけ離れて通貨量が急増した。金利押し下げやデフレ回避などのため各国中銀が巨額の緩和マネーを市場に供給したためだ。仮に通貨量が世界のGDP並みに縮小すれば、経済や市場には15兆ドルに上る負の引き締めのインパクトが及ぶ。各国中銀の動きをみた外為トレーダーは『いよいよ世界同時引き締めが始まる』と身構える」
GDPの伸び率を大幅に上回る世界の緩和マネーが、GDPの規模並みに縮小すれば、約15兆ドルもの巨額マネーが消える計算だという。この場合、最大の被害国はどこか。改めて指摘するまでもない。中国である。現在、外貨準備高3兆ドル台を死守する姿勢を見せているが、今後に予想される世界の金融引締め傾向から見て「徒労」の感が強い。中国だけが嵐の圏外に立つことなど不可能である。
中国は07年末に5.5兆ドルにすぎなかったマネーサプライが、現在は23兆ドルにまで膨張。この間に4.2倍もの増加である。一方、2007年の名目GDPと2017年(IMF推計値)のそれを比較すると3.3倍にとどまる。この0.9倍の差が、過剰マネーとなっている。その額は、ざっと1兆600億ドルと計算される。仮に、この全額が海外へ流出するとなれば、現在の外貨準備高3兆ドル強は、瞬く間に2兆ドルである。これは、思惑を含まぬ単純な前提に基づく話だ。世界的な過剰マネーが消えれば、それが及ぼす中国への影響は甚大である。
M2伸び率が急速鈍化
『大紀元』(7月14日付)は、「中国M2伸び率、過去最低を記録、不動産バブルがまもなくしぼむ」と題して、次のよう伝えた。
(3)「中国人民銀行(中央銀行)が7月12日の記者会見で今年上半期金融統計を発表した。なかには、不動産関連貸出やマネーサプライ(M2)などの伸び率が低下し、当局が不動産市場に対して引き締めを強化する姿勢が一段と鮮明になった。人民銀行の阮健弘・報道官によると、上半期の不動産向け銀行融資は前年比24.2%増の約30兆元(約498円)で、増加ペースは昨年年末の27%増から鈍化した。個人の住宅ローン残高は同30.8%増の約20兆元(約332兆円)だが、増加率は昨年年末と比べて5.9ポイント下落した。また6月末のM2残高は、163兆1300億元(約2708兆円)で、前年比で9.4%増となった。2000年以降の最も低い伸び率である」
中国のマネーサプライの基調は、不動産関連がらみの融資に大きな影響を受ける異常な状態にある。本来は、企業の設備投資や在庫投資などの生産関連融資が主流になるべきである。現実は、この主流とはかけ離れたバブルで「一花咲かせていた」もの。中国経済が、このように正常な状態から乖離した領域へジャンプしているだけに、これの正常化には、相当の「代償=成長率低下」が不可欠になっている。この覚悟が、中国政府にあるとは思えない。適当に時間をかけていれば、なんとかなるだろう、という根拠なき楽観論に支配されていると見える。その程度の認識で、これまで経済運営してきたことは疑いない。
(4)「中国メディア『鳳凰財経』(7月13日付)は、M2伸び率の鈍化で、各業界、特に不動産業界に打撃を与えると指摘し、『過熱する不動産市場の終焉を意味する出来事だ』と分析した。さらに、業界関係者の話として『不動産バブルはまもなくしぼむだろう』と報じた。中国当局は過去十数年、不動産市場への投資により経済成長を推進する方針でM2を急増させた。一方、『鳳凰財経』によると、銀行の住宅ローン利息も上昇する傾向にある。世帯1軒目の住宅ローン貸付金利は4月の4.49%だったが、5月に4.73%、6月には4.89%に上昇した。今後、当局の貸出基準金利の5%前後に並ぶとみられる」
マネーサプライ(M2)の伸び率は6月末、前年比で9.4%増であり、2000年以降の最も低い伸び率である。中国政府が掲げる年間目標のM2伸び率は12%であった。これを大幅に下回っている。マネーは、経済循環において血液に当たる重要な役割を果たしている。この流れが細っている現状は、それなりに深刻に受け止めるべきだ。中国政府が、「バブル延焼」に強い意志で立ち向かって、消火活動をしていることを示している。
この消火活動が成功するか否か。まだ、疑いの目で見られていることも事実だ。消費者は、中国経済が住宅バブルと併存していることを熟知している。未だに、今後の値上がり期待で住宅を購入する層が後を絶たない。だが、バブルは永遠でない。この世界史的な事実を知れば、矛を収めるのが賢明だが、人間の欲望には限界がない。最後のババは、欲に目がくらんだ庶民が引くのだろう。その結果、気の毒だが無一文になろう。
6ヶ月内にバブル調整
『大紀元』(7月14日付)は、「中国住宅価格、将来6カ月内に調整局面へ」と題して次のように報じた。
前記の記事で、マネーサプライM2の増加率が、2000年以来の低いものと指摘している。この事実から判断すれば、中国全土を焼き尽くした不動産バブルの鎮火は目前に来ている。特に注目したいのは、二つの外国調査機関が揃って、「6ヶ月後」の住宅価格下落を予測していることだ。警戒警報のブザーが鳴ったと言える。要注意である。
(5)金融情報ブログ『ゼロヘッジ』(ZeroHedge)ではこのほど、中国一部の都市部で実施されている抑制措置で、向こう6カ月間に住宅価格が調整局面に入るとの分析記事を掲載された。同記事によると、2016年の大半と17年年初は、中国国内の住宅価格は前年同期比で10%上昇した。16年末に住宅を購入した国民は、年収の160倍以上の資金を用意しなければ、マイホームを手に入れることが出来ない計算になる」
16年末に住宅を購入した国民は驚くなかれ、年収の160倍以上の資金を用意しなければならなかった。異常であることは言うまでもなく、こういう状態が、なお続くと期待できるはずがない。住宅バブルは、終わるべくして終わる。バブルの自滅である。この過程をぜひ、目を見開いて観察していただきたい。私は、平成バブル崩壊でこの事態を目の当たりにした。次は、崩壊の舞台が中国に移る。
その住宅価格の調整は、6ヶ月後であれば年末から18年年初になろう。そのときはすでに、中国共産党の次期5年間の人事が決定済みである。習近平氏にとっては、政治的には痛くも痒くもない時期に入る。多分、こういう計算をして金融引締めに入っているのだ。相当の「悪知恵」と言うほかない。要するに、「ワル」という存在だ。
(6)投資サービス調査会社の『TSロムバード(TS Lombard)』は、中国市場に関する最新調査で、住宅価格を観測し続けてきた55の都市のうちの25の都市の政府は、今年はじめから、相次いで住宅市場を沈静化するために購入制限措置を打ち出していると明かした。新たな抑制措置には、頭金比率の引き上げ、購入された後から住宅が転売目的で売出されるまでの期間を延ばす、などが含まれている。TSロムバードは、『一部の抑制措置が強化されたため、将来6カ月内、住宅価格は調整局面に入る』と予測する」
前記の金融情報ブログ『ゼロヘッジ』に続いて、『TSロムバード』も「6ヶ月内の住宅価格調整の開始」を予測している。後者では、住宅価格を観測対象都市55のうち、25都市政府が今年はじめから、相次いで住宅市場を沈静化させるべく購入制限措置を打ち出している事実を上げている。マネーサプライM2の伸び率が急低下している背景には、こういう地方政府による住宅購入制限措置が働いている結果でもあろう。
(7)「10年前、大多数の住宅購入者が支払う頭金は販売額の5~7割だったことに対して、この2年間に頭金を3割、または3割以下しか支払わない住宅購入者は急増し、購入者全体の80%を占める。ほとんどの購入者が金融機関の住宅ローンに頼っているのが現状だ。TSロムバードの調査によると、中国人民銀行(中央銀行)は今後金融機関の新規貸出に占める抵当ローンの割合を、2016年の40.5%ら30%で減らす方針を打ち出している。この方針で、住宅ローンを借りることが難しくなり、貯蓄だけで住宅購入資金を賄えないことになるため、国民は住宅を買うのを控えるだろうと予想される」
中国政府は、住宅ローンの条件を緩和させることで「住宅バブル」を側面かから支援してきた。その意味では「確信犯」である。中国政府は、劉暁波氏を獄窓につないだが、これとは比較できない実質的な「大罪」を犯した。例えば、10年前に頭金支払い率は販売額の5~7割だった。これに対して、この2年間の頭金比率は3割、または3割以下という「あがき」ぶりである。無理矢理、GDPを押し上げるべく住宅ローン条件を緩和させて、年収の160倍という異常ゾーンへと住宅価格を引き上げさせて、庶民の買い気を煽った。こういう国家の振る舞いが許されるだろうか。「親中派」はどう見ているのか。
住宅購入者は急増して購入者全体の80%を占める。ほとんどの購入者が金融機関の住宅ローンに頼っているのが現状だ。この住宅ローン条件が厳しくなれば、住宅販売が落ち込むのは当然であろう。政府の住宅ローンへのさじ加減一つで、住宅販売を動かせる現実が明らかになっている。この動きから見て、住宅バブルを引き起こした最大の責任者は中国政府である。もっと絞り込めば、習近平氏の立身出世のためである。
(8)「同調査ではまた、今後中小都市の政府当局も大中都市と同様に、住宅価格抑制政策を実施していくと推測した。これによって、『17年下半期の中国不動産市場の販売規模の増加ペースが緩やかになり、毎月の新築住宅取引済件数は前年同月比で10%ずつ減少する』との見通しを示した」
投資サービス調査会社の「TSロムバード」はまた、中小都市の政府当局も大中都市と同様に、住宅価格抑制政策を実施していくと推測している。この結果、今年下半期の新築住宅取引済件は、前年比10%ずつ減少すると見ているのだ。これが、現実化すれば、もはや中国経済を支える柱はインフラ投資だけとなる。片肺飛行を余儀なくされよう。
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(2017年7月21日)
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